2.室内空気関係の改正JIS 原案の作成
(1)背景・概要
(株)三菱総合研究所からの委託事業として、室内空気関係の改正JIS 原案の作成に関する検討を行った。室内空気関係のJIS は、経済産業省が主管の13 規格と国土交通省が主管の10規格の計23規格があり、これらが改正検討の対象となっている。
近年、住宅の高気密・高断熱化に伴い、1990年代後半よりシックハウス問題が顕在化し、経済産業省による建材からのホルムアルデヒド発散量規定、厚生労働省による室内濃度の指針値の公表、国土交通省による建築基準法の改正など、様々な対策が行われてきた。
建築基準法改正やシックハウス対策のため、室内空気中の化学物質の濃度測定および建材からの汚染化学物質の放散量測定について規格化が進められたものである。規格の作成にあたっては、国際的な動向も視野に入れながらISO/TC146(室内空気)/SC6(大気の質)で提案・制定されているISO(一部CD、DIS)を基に国内の施策、研究動向を反映してJIS 化された。JIS が規定されたことにより、中国、韓国などのアジア諸国では、JIS を参考に国内の規格化が進められており、JIS を適切に改正していく必要性が求められている。我が国においては、室内空気関係JIS が多岐にわたる強制法規に引用されている。主な強制法規は、厚生労働省で公表している「室内空気中化学物質の採取方法と測定方法」、「室内空気中化学物質の測定マニュアル」、文部科学省で策定している「学校環境衛生基準」、「学校環境衛生管理マニュアル(改訂版)」、国土交通省等のホルムアルデヒドに関する大臣認定制度や「住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅表示制度」などがある。これらの背景を勘案し、室内空気関係JIS の一括した規格改正を目的とし本調査研究事業に取り組んだ。
(2)2011年度の成果
2年計画の初年度として、次の調査および検討を行った。
(1) 国際規格の調査
室内空気関連のJIS は、原案の作成にあたって国際的な動向も視野に入れ、ISO/TC146/SC6 で提案・検討されている国際規格(ISO)または規格原案(CD、DIS 等)をもとに国内の施策、研究動向を反映してJIS 化が進められた。
この際に参考としたISO 原案はその後修正などを経てISO(ISO16000:Indoor air シリーズ)として制定・発行されている。これらの最新国際規格の調査を行いJIS の規定内容と比較し、改正のために必要な変更点等を調査した。検討対象となっている各JIS と対応するISO の関係を図2および図3に示す。

図2 建材等からの放散測定に関するJISとISOの関係

図3 室内空気測定に関するJISとISOの関係
(2) 改正に関する検討および原案作成
現行JIS の規定内容を確認すると、国内で一般に用いられているもののJIS で規定されていない方法や、ISO に規定されているものの国内では入手が困難な試薬など規定内容に検討すべき課題がある。今回の改正原案の作成にあたっては、国際規格を含む関連規格を総合的に検討し、さらに国内関係団体等の意見を調査し、これらを踏まえて改正についての検討を行った。
2011年度は、室内空気関連のJIS のうち、建材等からの放散測定に関する13件のJIS を対象として改正原案の作成作業を開始した。また、改正検討の対象となっている23規格において、JIS 間で、用語及び定義、記号、単位、式などが必ずしも統一されていないこと、対応する国際規格があるものについては、国際規格と整合がとれていないものがあり、改正原案の作成においては、これらの扱いについてもどのように統一、整合させるかが議論された。
なお、室内空気測定に関する10 件のJIS の改正原案の検討・作成を含め、建材等からの放散測定に関するJIS の最終的な改正原案は、2年目(2012年度)に作成する予定である。
これらの検討結果は、当センター内に設置した委員会(本委員会および分科会)において審議され、成果報告書として取りまとめを行った。
(3)2012年度の計画
2012年度は、改正検討の対象となっている23件のJIS について、必ずしも統一されていない用語及び定義、記号、単位、式などについて、JIS 間、対応する国際規格との整合を含めて引き続き検討を行う。
改正原案の作成対象となっているJIS については、検討委員会の下に分科会を設置し、国際規格との整合を含めた規格の改正見直し作業および改正原案の作成を行う。
本年度は、昨年度の成果報告書をもとに、室内空気関係JIS の改正、国際規格動向等に関するシンポジウムを秋頃に開催する予定である。シンポジウムにおいて広く、室内空気関係JIS の用語等の統一や改正原案に関する意見等を募り、委員会での審議を経て、本年度の成果に反映していくことを計画している。