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Part1 有機系建築材料の種類と劣化因子について

建材試験センターの機関誌「建材試験情報」で2013年6月~2015年6月にかけて連載していた基礎講座「有機系建築材料の劣化因子とその試験」をアーカイブしていきます。(一部加筆修正)
PART1は2013年6月号からです。

1.はじめに

 建築物は多くの材料によって構成されており、私たちの身の回りには数え切れないほどの種類の建築材料が使われています。

1.1 無機系材料と有機系材料とは

 これらの建築材料を無機系材料と有機系材料というくくりで分けた場合、無機系材料は鉄やステンレス、アルミ等の金属、コンクリート、石材、レンガ、陶器、ガラス等があり、特徴としては強度・耐火性・耐久性・耐薬品性に優れ、主に主要構造部や外装材、水周りのユニットの材料として用いられます。

 有機系材料は伝統的な材料として木材、紙、草などがありますが、その他に比較的新しい材料として樹脂ゴムを使ったものがあげられます。樹脂やゴムを使った有機系材料は無機系材料と比較して柔らかいものが多く、熱や水分、空気中の酸素、太陽光などのさまざまな劣化因子によって可塑性分の揮散や油脂成分の散逸を起こし、無機系材料より早く劣化する傾向があります。

1.2 建築材料の耐久性とは

 建築材料にとって耐久性能とは、使用環境に存在する劣化因子に対する抵抗性といえます。耐久性能の高い材料によって建築物を構成することが、建築物の長寿命化に繋がることから、試験によって耐久性能の確認された建築材料が求められています。
 当センターでは有機系建築材料について、さまざまな耐久性試験を多数実施し、日本産業規格(JIS)や日本建築学会の建築工事標準仕様書(JASS)に定めた性能を保持しているかの確認や評価を行っています。こうした立場から、本稿より「有機系建築材料の劣化因子とその試験」と題して有機系建築材料の要求性能や試験方法、試験設備などについて紹介していきます。

 PART1では、有機系建築材料とその劣化因子、劣化試験結果と耐久性能の関係について解説します。

2.屋内(建物内部)で使用される有機系建築材料

 有機系建築材料は構造体として木材が使用されているほか、調湿性や保温性、適度な柔らかさを得ることができるため、床や壁など内装材として幅広く使用されています。また、壁内に施工される断熱材透湿防水シート、窓に貼り付けることで日射量の調節を行う窓ガラスフィルム、直接目で見えない部分でも、壁紙やじゅうたん等を施工する際に用いる接着剤や各種配管のパッキンなど、多くの有機系材料が使用されています。内装材として使用される建築材料は、劣化因子も人の活動に起因するものが多く、用途や使用環境に合わせて適切に選択することが望まれます。下表に屋内で使用される有機系材料と劣化因子の例を示します。

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有機系建築材料の基礎講座_part1_01
 

3.屋外で使用される有機系建築材料

 屋外で使用される有機系建築材料としては、屋上に施工される防水材、目地や窓枠に施工されるシーリング材、外壁に塗布される塗料などがあげられます。これらの材料は建物が温度や風、地震などの影響で変形する際に、建物の変形に追従する能力が求められます。
 また、近年では防水材料の上に植栽を施し、屋上緑化とするケースが増えていますが、屋上緑化を行う場合、植物の根や肥料、農薬などの影響についても考慮する必要があります。これらの屋外で使用される建築材料は、直接太陽光や雨風にさらされるだけでなく、雹(あられ)や強風時の飛来物、鳥や虫、植物などの影響も避けることができません。下表に屋外で使用される有機系材料と劣化因子の例を示します。

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有機系建築材料の基礎講座_part1_02

4.耐久性試験における劣化方法

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有機系建築材料の基礎講座_part1_03

 材料の耐久性能の見極め方として最も正確な方法は、材料の施工される環境と同じ条件で材料を実際に施工し、経年劣化の有無を確認する暴露試験です(左図参照)。

ただし、そのような方法では、試験結果を得るのに時間がかかり過ぎることや、試験体の種類によっては試験体が巨大化し不便であることから、劣化要因を抽出し、実際の使用環境が適切に考慮されるよう劣化因子を強めることによって加速し、短期間で性能の変化を確認する方法が一般的です。

5.耐久性試験結果の判断について

 耐久性試験を実施する際、多くの方から「この試験は実際の何年相当か」というご質問をいただきますが、残念ながらこの質問に明確に「何年相当」と答えることは不可能です。理由としては複数ありますが、そのうちの一つとして、屋外などの実際の使用環境と試験装置内の環境では、劣化因子の数が異なることが挙げられます。
 一般的に、試験装置による劣化は特定の劣化因子に対する抵抗性を確認するためのものであり、特定の劣化因子についてのみ、使用環境を考慮した強い負荷を与えますが、同時に与えられる劣化因子の数は使用環境より大幅に減少します。また、多くの材料で、劣化因子が他の劣化因子に影響を及ぼす(促進する)ことも確認されています。そのため、試験によって得られた結果は、特定の劣化因子に対する抵抗性という解釈をする必要があり、総合的な耐久性能については、複数の劣化因子に対する抵抗性を検討・評価する必要があります。

 次回からは劣化因子ごとに、その劣化因子の影響を受ける建築材料、試験方法、試験装置等について紹介します。

【参考文献】

  1. 建築用シーリング材ハンドブック(2008 日本シーリング材工業会)
  2. 建築工事標準仕様書・同解説JASS8 防水工事(日本建築学会)
  3. 大石不二夫:高分子材料の耐久性(1993 工業調査会)
  4. Wolfram Schnabel:高分子の劣化(1993 中央印刷)

<執筆者:中央試験所 材料グループ(当時) 志村重顕>