Part4 水や薬品などの液体による劣化とその試験
建材試験センターの機関誌「建材試験情報」で2013年6月~2015年6月にかけて連載していた基礎講座「有機系建築材料の劣化因子とその試験」をアーカイブしています。(一部加筆修正)
PART4は2015年6月号からです。
1.はじめに
今回は、水や薬品などの液水を劣化因子として取り上げます。
有機系建築材料は、水や薬品などの液水が表面に接触したり、内部に浸入・含浸したりすることで、変形(膨張・収縮、反り、ひび割れ)、変質(変褪色、腐蝕、腐朽)、汚れの付着などの劣化が生じるため、「耐水性」や「耐薬品性」が求められ、様々な試験による性能評価が行われています。
2.水による劣化と試験方法
木材や木質系建材のように、ある程度の含水率を保持することが必要な材料もあります。また、最近は多機能建材として吸放湿性や保水性が求められることもあり、一概に水を悪者扱いはできませんが、ここでは劣化因子として水を取り上げます。
建築物を水による劣化から守るためには、雨仕舞や防水などの建築的手法によって水の浸入を防ぐとともに、浸入した水を滞留させないよう維持管理することが重要です。その上で、建築材料としても水の浸入に備えて、その耐性が要求されます。日本産業規格(JIS)でも有機系建築材料の水への耐性に関する試験方法や品質基準が多数規定されています。一例を下表に示します。
試験方法の多くは、水又は水と他の因子を複合した条件下で劣化処理を施して、「外観観察」、「質量・寸法の変化」又は「強度の低下」によって品質基準を判定するものです。強度の低下は、劣化処理の前後で曲げ強さや引張強さなどを測定して、前後での性能低下の程度を判定します。水と他の因子の複合劣化として代表的なものに、雨水と日射(紫外線)による劣化を人工的に再現する促進耐候性試験や、沿岸地域での塩害を再現する塩水噴霧試験などがあります。
3.薬品などによる劣化と試験方法
建築材料は、建築物の用途や使用する部位によっては、酸・アルカリなどの薬品や汚染物質による劣化を受けることもあるため、薬品や汚染物質への耐性も要求されます。JISでも、有機系建築材料の薬品や汚染物質への耐性に関する試験方法や品質基準が規定されています。一例を下表に示します。
例えば、屋内で使用するものでは表面に化粧を施したボード類、床タイル・シートなどが、屋外で使用するものでは仕上塗材やルーフィング材などが対象材料として挙げられます。また、建築材料以外に目を向けると、下水道資器材として用いるガラス強化プラスチックなどにも耐薬品性が要求されている例もあります。
酸性の試験液としては、硫酸、酢酸、塩酸などの水溶液、アルカリ性の試験液としては炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの水溶液が用いられます。試験方法は、試験液や汚染物質を所定の時間(例えば24時間)滴下又は浸漬して、変色や光沢変化などの「外観観察」、引張強さや伸びなどの「強度の低下」によって評価することで品質基準を判定するものです。ここで、試験片表面に試験液や汚染物質を滴下する試験の実施状況を写真1に示します。
JIS K 6902(熱硬化性樹脂高圧化粧板の試験方法)は薬品以外にも、食品(例:紅茶、コーヒー、しょう油)、日用品(例:食用油,インキ)など様々な汚染物質の例が示されています。試験方法としては、有機系建築材料以外にも、大理石などの無機系建築材料にも準用できます。化学薬品を扱う施設の実験机や、家庭・飲食施設のダイニングテーブルに用いる材料の耐汚染性試験方法として広く活用されています。
4.まとめ
建築物をより長くより良い状態で使用するために、有機系建築材料も製造業者各社において日々開発・改良が重ねられています。当センターも試験方法の研究開発や試験設備の拡充などを行い、良質な材料の普及促進に寄与していきたいと考えています。
ここではご紹介しきれなかった試験も多数実施しています。ご関心のある試験などがございましたら、お気軽に中央試験所 材料グループ(TEL:048-935-1992)までお問い合わせください。
【参考文献】
- JISハンドブック(8)建築Ⅰ(材料・設備),(9)建築Ⅱ(試験),(26)プラスチックⅠ(試験),(27)プラスチックⅡ(材料), (一財)日本規格協会,2015.1
<執筆者:中央試験所 材料グループ(当時) 菊地裕介>